丹後・若狭 その3
舞鶴にいたころはとにかく色んなところに行ってみた。
どうせ何年かしたら転勤になるという意識は最初からあって、この貴重な機会に行けるうちに行っておこうという気分だったし、関西、それも日本海側という今まで全く縁の無かった土地が新鮮で興味深かったというのもある。
そんな舞鶴時代の中で、まず最初に足を延ばしてみたのが丹後の宮津市だった。
まあ、港町と言うよりは漁村という感じか。
神奈川で言えば、三崎をもっと田舎にした感じだ。
余談だけどこの前十数年ぶりに三崎の裏路地をぷらぷら歩いたらこの宮津に似てるなって思った。
もちろん人や車の数が全然違ったけど、それでもやはり漁村って言うのは何となく同じような雰囲気になるのだろう。
今でこそド田舎だけど、宮津の古い町並みを歩くと、かつて栄えていた名残がけっこうあって、大きな商家や歓楽街(スナックとかじゃなくて芸者的な)の跡が見受けられる。
都に近い港町として、昔は存在感があったんだろう。北前船の港でもあったようだ。
しかし何と言っても、いまの宮津を支えているのは日本三景の一つ、天橋立。
休日に宮津に来ている人のほぼ全ては天橋立を見に来てるんじゃないかと思う。
関東から来た俺もそれぐらいは知っていて、引っ越したばかりの4月にさっそくバイクで行ってみてケーブルカーに登り、定番の股のぞきとかした記憶がある。
まあ、天橋立は有名でいくらでもガイドがあるからここでは置いておくことにする。
(実際仕事でお客さんが来るといっつも天橋立あたり案内してたもんだから飽きた)
宮津は、引っ越したばかりの時だけでなく3年半の舞鶴時代で一貫して好きだった場所の一つだった。
まず、舞鶴から宮津までの間の景色が素晴らしいのだ。絶好のドライブコース。
舞鶴から西へ宮津を目指すとまず由良川という大きな川を渡ることになる。
この川が、これぞ自然の川って感じの良い味を出していて、川に沿って宮津へと続く道路を車で走っていると周りの田園風景と相まって素敵なのだ。
そしてこの道路は車が少なくて本当に気持ちいい。一応国道なんだけど。
そうそう、あとこの辺りがちょうど安寿と厨子王の物語の舞台で、少し横道に入ると供養のための塚があったり、山椒大夫の屋敷跡、なんてのもある。
ここに限らず北近畿ではこんな風にだいたいどこに行っても歴史的なものが出てきて、その感じは関東では無い雰囲気で感心すると同時に、時々よーく考えてしまうとなんだかその歴史が重苦しく感じることさえあった。不思議な感じなのだ。
川沿いに走るとやがて海となり、その海沿いをさらに進むと宮津に着く。
この海沿いの道がこれまた素晴らしい景色なんだけど、いい感じのワインディングロードなために、結局ついに写真を撮ることが無かった。残念。
それと、舞鶴から宮津へ行くルートはもう一つ、山を越えて内陸からというのもある。
これはほぼ同じルートで高速道路があるので普通は使わないのだけれど、これまた味のある道だった。
ちょうど、ここで越える山と言うのが大江山。
諸説あるらしいけれども、「大江山いく野の道も遠ければ まだふみも見ず天橋立」の大江山であり、酒呑童子の鬼伝説の大江山でもある。
(こういうの、仕事の時には日本人のお客さんに対する鉄板ネタの一つだったり。俺多分この辺の観光ガイドできる。)
ちなみに由良川沿いにある酒蔵、ハクレイ(白嶺)酒造の主力商品の一つに「酒呑童子」ってのがあって、これが安いわりにうまくてよく飲んでたな。これは余談。
さらにここ大江山にはコース2つだけと小さいながらもスキー場があり、舞鶴から40分ぐらいで行けて貴重だった。
(ただ、このあたりはまだ積雪が少ない地域なので雪の多いときしかオープンしていない。しかし幸いなことに俺がいるときは雪の多い年ばっかりだった)
雪があるときはこんな道。
まあドライブルートの話はこれくらいにして。
もう一つの、そして最大の宮津の魅力は食べ物のうまさだった。
さすが漁村だけあって、魚の美味さは折り紙つき。もちろん舞鶴と比べてもやっぱり違う。
JR宮津駅の前にラーメンとかカレーも出す普通の大衆食堂&飲み屋みたいな店があるんだけど、そこの魚は本当に安くてうまかった。
流石に有名らしく、わざわざ遠くから来て宿泊までして昼も夜もそこでひたすら酒食を続ける人もいるらしい。
確かに美味くて俺も何度も行ったけど、いつも車なので結局最後まで飲んだことは無かった。
ここに泊まって飲みながら魚を食べまくる、っていうのはいつかやってみたい。
ちなみにここのラーメンは確か300円ぐらい、親子丼も400円ぐらいだったか?学食みたいである。で、そういうのも美味かった。都会の店はちょっと見習ってほしい。
まあ、百聞は一見に如かず。
天橋立ぐらいだったらこっちの人でも観光で行く機会はぎりぎりあるだろうから、その時は宮津の町をぶらぶらするのもいいよとお勧めしとく。
ところで、この宮津をさらに越えると舟屋で有名な伊根町、与謝野町、京丹後市がある丹後半島となる。
丹後半島ともなると流石に関東から行く人はなかなかいないだろうけど、ここはとても京都府とは思えない田舎というか秘境と言っても差し支えないところで、かつ、なぜか心にグッとくる素敵な土地なのである。
今の都会生活の中で忘れてしまう前に、この辺りもまたそのうち書いておこう。