Festina Lente

帰ってきた「常日頃の思い」。題名はローマのことわざ「ゆっくり急げ」。

丹後・若狭 その5

どうやら舞鶴ではもう雪が降っているらしい。

最近たまに戻りたいなぁと思うこともあるけど、雪が降ったと聞くとちょっとその気が無くなる。

旅先の雪はいいものだけど、その中で働くとなると雪は大変なのだ。

 

ということで記録のための思い出話も5回目。

「丹後・若狭」と言いつつ舞鶴とその西側の「丹後」の話ばかりだったけれども、今回からはようやく「若狭」の話。

 

舞鶴市のすぐ東隣はもう福井県の高浜町というところで、そこから若狭地方となる。

福井県は東半分と西半分(あるいは北と南と言うべきか)で大きく分けられ、福井市や鯖江市がある東(北)側が嶺北地方、小浜市や原発で有名になってしまったおおい町、高浜町がある西(南)側が嶺南地方と呼ばれている。

(そもそも嶺北・嶺南という分類、舞鶴に行くまで知らなかったけど現地では天気予報なんかでよく使われていた)

そしてこの嶺北・嶺南を旧国名で言うと嶺北が越前、嶺南が若狭となる。

旧国名ではあるけれど、みんな使ってたし味のある言葉だからここでも「若狭」と表現したい。

 

舞鶴で暮らすことになって、京都や大阪をはじめ関東にいたときに馴染みが無かったところにも色々と行くようになったけど、自分にとって最も良い発見だったのはこの若狭。

福井ってなんか地味で、東尋坊があってあとは原発がたくさんある?ぐらいのイメージしか持ってなかったんだけど、かつて奈良/京の都と大陸の中間点、海の玄関口となっていただけあって素晴らしい歴史と文化、そして何よりうまいものがたくさんあるところだった。

そう、まさに福井ではなく若狭という言葉の方が今もしっくり来る感じ。

言葉ではうまく伝えられないけど本当にいいところだったなーと思う。

東京勤務となって、週末に自転車や車でふらっと遊びに行けなくなくなってしまったのが思いのほか寂しい。

 

さて、そんな若狭の中でもっとも馴染み深かったのが舞鶴の隣の高浜町で、舞鶴から車で20分ほど、自転車でも行ける距離だったのでちょっと時間のある時などよく行っていた。追浜から観音崎とか長者が崎に自転車やバイクで行っていたときのような感覚かな。

ここがまた一言で言ってしまえば田舎なんだけどもなんとも魅力のある土地で、もし舞鶴の工場にずっと勤めろと言われたらきっとここに居を構えていたと思う。

 

福井県の最西端、高浜はかつて海水浴で大いに栄えたところで、少しさびれたとは言え海沿いには今も京都・大阪あたりからの海水浴客向けの旅館が軒を連ねている。

とにかく海と砂浜が綺麗で、さらにその海にせり出すような青葉山が実に良い感じの景観を作り出していた。

中でも、特に有名な和田という地区の海水浴場は今でも広い砂浜を持っていて、砂がどんどん無くなってきている三浦半島の野比海岸あたりに分けてあげたいほどだった。

 

(和田の海水浴場と町のシンボル青葉山

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そんなところなので今でも夏になれば確かに海水浴客はたくさん訪れるのだけれど、高速道路が便利になったおかげで昨今は皆日帰りで帰ってしまうらしい。

そのためせいぜい浜茶屋(この言葉も馴染みが無かったが「海の家」のこと)ぐらいにしかお金が落ちず、旅館街はさびれてしまったとか。

交通の便が良くなれば人が来て地元が潤う、とは必ずしもならないようだ。

ちなみに何十年か前の写真を見せてもらったことがあるが、それはもう湘南並みの盛況っぷりだった。まあ、今でも田舎の割には人が来ていると思うけど。

 

高浜は海・砂浜だけではなく、その町並みも素敵だった。

かつて日本各地にあったであろう木造建築に挟まれた「路地」が今も健在で、それが今も日常の当たり前の光景としてある。

車がまあ何とか普通に通れるというような道幅の道路で子供が遊ぶことができて、大人もそこですれ違う近所の人に挨拶を交わすような、そんな感じのところなんだけど、これって今ではかなり貴重なものだと思うのだ。

そして、かといってド田舎でもう過疎まっしぐら、という中で残っているわけではないというのが重要な点であると思う。

むしろ外から見る限りこのあたりの生活レベルは高く見え、プラスチックっぽい玉石混交な都会よりも実は豊かなように思えた。

そう、なんというのか品があるのだ。これは若狭で広く感じられる印象で、一朝一夕でできた町でないというのがよく伝わってくる。

 勝手な感想だけれども、ここで育てば性根の曲がったやつにはならないんじゃないかって思う。

事実、ほとんど事件なんて起こらないとか。

「幸せな都道府県」というランキングがあって、上位はいつも福井や富山で争っているらしいけど、なんかわかる気がする。

 

 

若狭、高浜については続いて歴史・文化、そして何よりうまい食べ物のことを書かなければいけないのだけど、思い入れがあって長くなりそうなので続きは次回にまわすことにする。

自分にとってはとても思い出深い土地だ。

 

東尋坊より落差があるという「音海の断崖」近くの灯台。桜と海がきれい。)

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