Festina Lente

帰ってきた「常日頃の思い」。題名はローマのことわざ「ゆっくり急げ」。

丹後・若狭 その6

引き続き、若狭・高浜の話。

 

福井県の西端の高浜は、前回書いたように、ざっくり言うと海がきれいで何となく品のある田舎町、となるのだけれど文化財も見逃せない。

数は少ないが、なんでこんな田舎に…という感じの名刹があるのだ。

 

これは高浜に限らず若狭全体に言えることで、歴史的・文化的なものには非常に恵まれた土地だと思う。

やはり都から日本海への玄関口として早くから開けていたのだろう。

さらに、そういう文化財が観光地っぽい見世物になっているのではなく今も地域に息づいているというのが若狭の素敵な点。

特に寺が多い小浜あたりでは国宝や重要文化財も結構あるのだけれども、例えば仏像は博物館のショーケースに入っているのではなく、当時のままお堂の中にあり、拝観するときも「見せてもらう」という感じで住職なりおばちゃんなりが案内してくれるパターンが多い。

見る方としては間近で見れたり雰囲気ある中で見れたりっていう利点があるし、なんというか、しっかり寺として機能しているという感じがしていい。

自分としては家に仏壇も無いし全然仏教徒じゃないんだけど、こういう雰囲気は残していただきたいと思う。

 

さて、話を高浜に戻すと、青葉山の上にある中山寺はおすすめ。

中山寺、本堂)

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この寺、聖武天皇が作らせたというかなりの実力派。創設は天平年間とか。

それにしても若狭の寺にはこの写真のような形のお堂がすごく多い。ほとんどこんな感じである。

建築のことはよくわらかないが、よくあるがっしりとした中国っぽい寺と比べると、なんか和風な感じがして個人的には好きだ。勝手に若狭様式と呼ぶことにした。

(そういえば先週行った鎌倉の杉本寺はこの若狭様式っぽかった。)

このお寺も非常にローカルな感じで、拝観料を払ったらそのままおじさんがマンツーマンで案内してくれる。

ま、たまたまおじさんが暇だっただけかもしれないけど。

 

しかしこの中山寺、ネットで調べてみたらホームページが今風で意外…。写真も綺麗。

http://nakayamadera.jp/index.html

 

ここの魅力はまずは門にいる阿吽の金剛力士像、そして本尊の馬頭観音がすごいらしい。

なお本尊は33年に一度開帳の秘仏で、今年の春までちょうど公開してたらしいが俺はそれを最終日の夕方に知って結局行けなかった。これは33年後に期待したい。

それと、山の上にあるから景色が素晴らしい。高浜の海岸がよく見え素敵だった。

(少々見にくいけど写真。海が見える寺ってのもいいね。)

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そんな感じで、高浜の歴史や文化は見どころだけれども、何より良いのは実は食べ物だったりする。

東京の感覚からすれば舞鶴だって十分うまい魚が食べられるのだけれども、こっちの高浜とか小浜を覚えてからというもの、舞鶴は値段の割にそれほどでもない…と思うようになってしまったのである。

 

ただ、小浜はともかく高浜は非常に小さい町なために食事を出す店があまり無いというのが難点。

そこでよくサニーマートというスーパーにわざわざ舞鶴から買い物に行って、家で料理をして食べるという味わい方をしていた。

このサニーマート、本当にただのスーパーなんだけど、とにかく魚が良くて値も安かった。

どう見てもさっきまで近所を泳いでましたって感じの魚も多くて、ビニールに入ってるヒラメあたりが陳列棚でまだ生きてて動いてたりしてるのだ。

もともと魚が好きだし関東ではお目にかかれない魚もいたりするので、今日はどんな魚がいるかなーって見るのが楽しかったなー。

余談だけど、旅行や出張で見知らぬ土地に行った時は魚料理を食べるのがいいと思う。一番地域差がある気がする。

なおサニーマートは野菜も地の物が多く、これまた良かった。

舞鶴時代によく料理をするようになったのは、こういういい素材があったからだろうな。

こういういいものがあって、しかも安ければ、チェーンのファストフードなんて食べる気が無くなるのも道理。

 

食事を出す店があまり無いと書いたけれども、普段使いではないちょっと良いものであれば高浜にも結構ある。

これは、前回も書いたようにかつて大阪や京都から行楽に来る人向けの旅館が栄えていたことによる。いわゆる料理旅館、というやつだ。

波の音が聞こえてきそうな所に建つ、歴史を感じさせる日本家屋の座敷で、朝まで泳いでいたような魚がばんばん出てくるわけで…これはもう美味くないわけがない。

流石にこういうところになるといくら魚が安いとは言えそれなりのお値段になってしまうけど、それでも東京の感覚からすると大変リーズナブル。

店も変に気どってるような感じが無く、それでいて丁寧な仕事。こういうところはいつまでも残っていてほしいと思う。

本来こういうところは俺みたいな若造では難しいんだけど、たまたま知り合いが関係者だったりして運が良かった。小さい頃から不思議と食べ物関係の幸運が多い気がする…。

 

そんなこんなで、もう完全な自分向けの思い出話になっているけど、若狭がおすすめなのは間違いない。

東京からちょっと行きにくいのは確か。しかし、だからこその良さもある気がする。

こういう日本もまだある、あるいはこういう日本もあったんだ、そんな感じ。

とは言え流石に高浜のような小さな町にわざわざ行くのはあれだけど、小浜あたりなら十分観光するに堪えると思うので機会があったらぜひどうぞ。

小浜は非常に魅力的な町なので、またあらためて書き残しておきたい。

 

あ、それとそういえばこの地方は夏の花火が気合入ってるのもいい。

田舎の花火大会なんて…って正直思ってて事実舞鶴はそういう感じだったんだけど、若狭はすごい。都会ではできない近距離発射でダイナミックなのだ。

 

(高浜、和田の海岸と青葉山の夕景)

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